【知らないとまずいかも?!】アニマルウェルフェア=動物福祉とは

お役立ち

皆さんアニマルウェルフェア動物福祉といった言葉を聞いたことがありますか?
恐らく聞いたことがないという方が多いのではないかと思います。

アニマルウェルフェアとは、嚙み砕いて簡単に言ってしまえば、「動物をペットにしたり食べたりするのは仕方のないことだけども、せめてなるべく痛みや苦しみ、不自由さを与えないようにしよう」という考え方です。

後で詳しく説明しますが、近年EUを中心とした多くの国でアニマルウェルフェアは普及してきていて当たり前のものとなっています。

現在東京オリンピックによって日本が世界から注目を集めています。
そのような状況なので、大学院で動物福祉や行動学を学ぶ筆者の身としては、日本の人々にも世界基準になりつつあるアニマルウェルフェアというものを知っておいて欲しいという願いがあり、本記事を作成しました。

定義と概要

世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関であるOIE(国際獣疫事務局)による定義では、「動物福祉とは、いかに動物が生活環境と適応しているかを意味する。もし、健康で快適で、栄養状態が良く、安全で、内的に動機づけられた行動ができ、そしてもし苦痛、恐怖、慢性ストレスのような不快な状態にないのなら、動物は動物福祉がいい状態といえる。」と述べられています。

これは少し難しい言い方がされていますが、嚙み砕いてしまえば最初に述べたように「動物たちなるべく痛みや苦しみを与えず、自由を与えてあげよう」ということになります。

そして、これを具体的にしたものであり、アニマルウェルフェアの大原則になっているものに「5つの自由」というものがあります。
「5つの自由」では、その名の通り以下のような5種類に分類した自由が謳われています。

・飢えと渇きからの自由
 完全な健康と元気を保つために新鮮な水とエサが確保されること。

・不快からの自由
 避難場所と快適な休息場所を含む適切な環境が確保されること。

・痛み、傷害、病気からの自由
 怪我や病気の予防と迅速な診断および処置がなされること。

・正常な行動を表出する自由
 十分なスペース、適切な施設および同種動物の仲間が確保されること。

・恐怖と苦悩からの自由
 精神的苦痛を回避するための条件および対策の確保。

これら五つの項目が満たされているかがアニマルウェルフェアの達成度を考える際に重要になります。

動物福祉は動物愛護と混同されがちなのですが、この二つは全く異なるということを最後に明言しておきます。
動物愛護では、感情的で主観的に動物の幸せを想定しています。一方で動物福祉では、科学的で客観的に動物の幸せを判断しています。
例えば避妊手術を例にとってみると、動物愛護の観点では良しとする人も断固として反対する人もいるでしょう。しかし、動物福祉の観点からは、異性の個体と共存していないのに生殖の欲求だけがたまってしまうことや、子宮がんといった生殖器に関わる病気のリスクなどのデメリットと比較して、正しく行われる手術の苦痛は限りなく小さいといった判断から基本的に避妊手術は推奨されるのです。

歴史

動物福祉の出発点となったのは、1959年にイギリスの研究者のラッセルとバーチがまとめた三つのRの考え方です。
三つのRは、主に実験動物を対象にしたもので、「意識、感覚のない低位の動物種やin vitro(生体を使わず試験管の中などで完結する実験)への代替(代替:replacement)」、「使用動物数の削減、科学的に必要な最少の動物数使用(削減:reduction)」、「苦痛軽減、安楽死措置、飼育環境改善(洗練:refinement)」が挙げられました。

最初は3Rをはじめ動物福祉の考え方が注目されることはありませんでしたが、1962年にレーチェル・カーソンの「静かな春」によって環境問題の口火が切られ、さらに1964年にルース・ハリソンの「アニマル・マシーン」によって家畜福祉問題が一般に知られるようになると、動物福祉の考え方は次第に流通するようになりました。

このような背景でイギリスは、ブランベル委員会を立ち上げ動物福祉に関する法律や指針を作成し、「5つの自由」の前身となるものも完成させました。
そして「5つの自由」は現在の形に至るまで改良が加えられ、世界各国で動物福祉の基本となっています。

家畜の生産現場で問題視されている管理形態

ここでは、実際の家畜生産現場でアニマルウェルフェア上問題とみなされている管理形態や操作の一例を紹介します。

バタリーケージ

出典元:Wikipedia
春桜咲く – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

バタリーケージとは、上の写真のような採卵鶏(卵を生産してくれるニワトリ)を飼育するケージで、昔から使われている従来型のものです。

画像を見ても一目瞭然ですが、高密度で飼育でき、卵の回収も容易であるために生産効率は高くなります。一方で羽を伸ばしたり、砂浴びをしたり、巣箱や止まり木を使ったりすることができないので、「5つの自由」のうち特に正常な行動を表出する自由が奪われてしまうため、福祉的には問題があると言えます。

代替の飼育形態としては、EUの基準である750cm²/羽や高さ20cm以上、巣箱の設置といった細かな基準を満たした福祉ケージや、止まり木を設置した休息エリア、巣箱を設置した産卵エリア、砂浴びのできる運動エリアを多段的に設けたエイビアリー、また放牧などが挙げられます。

エイビアリーに関しては以下のサイトで画像と共に分かりやすく説明されているので、興味のある方は参照してみてください。
「バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン」

ストール飼育

こちらはブタやウシを体の向きを変えられないほどの狭いスペースで一頭ずつ飼育する形態です。
ウシに関しては、近年日本でもフリーストールと呼ばれる自由に動きまられる形態をとっている所も多いですが、養豚の現場では現在でも妊娠中や分娩直後のブタをストール飼育している所が大部分です。

ブタのストール飼育の様子を下に引用させてもらっています。

出典元:有限会社 豊浦獣医科クリニック

ストール飼育では、一頭ずつの飼養管理が容易であったり、個体同士の闘争を抑えられるといったメリットがありますが、体の向きも変えられないような状況なので、正常な行動をできているとは言えません。したがって、こちらも「5つの自由」のうち特に正常な行動を表出する自由が奪われてしまうため、福祉的には問題があると言えます。

世界と日本の情勢

EUやアメリカではアニマルウェルフェアの考えが浸透しており、具体的な対策も進んでいる一方、日本は非常に遅れを取っています

例えば、先ほど問題として取り上げたバタリーケージに関しては、EUでは法律によって禁止されています。一方で、2016年に「公益社団法人畜産技術協会」によって行われた調査では、日本では90%程度の農家がバタリーケージを利用していることが分かる(採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書)。

また、ブタのストール飼育に関しては、EUの法律では「種付け後4週間までと分娩一週間前以降」のみで許容されていますが、日本では特に規制する法律はなく、種付け後から分娩、さらには授乳期までずっとストールで飼育されることが多いです。

法整備は販売のレベルまで及んでいて、一定の基準を満たしたケージフリー卵(ケージで飼育していないニワトリによる卵)には下の画像のような認証ラベルを取得することができます。

出典元:flickr, Photo by Joel Kramer「Caged!」

また、企業も世界的な情勢を受けてアニマルウェルフェアの取り組みに積極的です。
マクドナルドやスターバックス、ネスレなどの大企業が、2020年代に商品に用いる卵をケージフリー卵に限定することを発表しています。

日本における今後の展望

EUと異なり日本ではアニマルフェアが普及しないのはなぜでしょうか。

ここからは筆者自身の考えが大部分ですので悪しからず。

生産者側がアニマルウェルフェアに則した管理形態に変化出来ないのは、コストがかかるからということに尽きるでしょう。コストというのは、設備投資のための初期コストだけではありません。アニマルウェルフェアのレベルが高くなると基本的に、飼育密度は低下する一方作業量が多くなるので、売り上げが減少する割には生産コストが増加するので利益が減少するのです。いくら動物福祉が大事だとは言っても、自ら利益を減らしに行くようなことはしたくないという農家の気持ちは非常に分かります。

では、この現状を打開するにはどうすれば良いのでしょうか。大きく分けて二つの方向性があると思います。

一つ目は、政府が補助金などと共にアニマルウェルフェアに関する法整備を行うことです。初期投資にかかるコストは政府が負担します。また、法整備により全農家が同時に同じ条件にさらされることで、価格設定は全体として上昇し価格競争はある程度に抑えられるのではないかと考えられます。

二つ目は、消費者の中に高福祉の畜産物の高品質、高級イメージを普及させることで、優れたアニマルウェルフェア条件下で生産された畜産物に高付加価値を行うことです。高福祉の畜産物をある程度高級でも一定数の消費者が購買するようになれば、アニマルウェルフェアに配慮した生産を行っていても十分に利益が出るようになり、高福祉の管理形態に転換する農家が増えてくるのではないかと考えられるからです。

具体的にどのような策を打てばよいのかは多くの議論が必要だとは思いますが、いずれにしてもこの二つのどちらか、理想は両方を並行して行うことが必要なのではないかと個人的に考えています。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。

アニマルウェルフェアとは何たるか、その重要性や問題点などなんとなく分かってもらえたでしょうか。

筆者自身は、難しい課題があってもアニマルウェルフェアを推し進めていくべきであると考えていますが、この分野は成熟途上で様々な意見があるのは理解できます。中には、「どうせ殺して食べちゃうんだから、偽善に過ぎないじゃん」と思う人がいるのも分かります。

個人がどのように考えるかはある程度広く認められるべきだと思います。ただ、国際化が進む現代では、世界的にアニマルウェルフェアは加速度的に進む流れにあること、日本は遅れているということは理解しておくべきだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました